AH21は生まれながらに保有する善玉菌を増やす、理想的な
機能性食品であり、予防医学食品と考えます
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・早川敏之

・江指隆年
・鈴木真言

東京慈恵会医科大学
国際バイオジェニックス研究所
聖徳大学
三菱化学ビーシーエル
  ・浅利昌男
・市原信恒
・村山智美
麻布大学獣医学部
麻布大学獣医学部
麻布大学獣医学部
乳酸菌並行複合発酵物質(AH21)の生体に与える影響について確認することを目的として本研究を試みた。実験には離乳期マウス24匹を用い、対照群、被検物質常用量群、同3.3倍群および同10倍群に分け4週間継続飼育した。飼育期間中、マウスの体重、糞便の量、外観状態などを経過観察し、飼育期間終了後、内臓の形態と重量並びに病理学的な変化について観察記録した。その結果として、実験群と対照群の発育に大きな差は認められず、肉眼的、組織学的にも被検物質による病理学的な変化は認められなかった。それゆえ、本乳酸菌並行複合発酵物質であるAH21の給餌によるマウス生体に対する影響はないものと考えられる。


腸内細菌は、ヒトならびに動物における生命活動に大きな影響を及ぼしていることが明らかにされている。1)各種実験動物の腸内細菌叢についての報告は多く、消化管内に腸内細菌が通常に存在しているマウス(通常マウス)と、全く腸内細菌がないマウス(無菌マウス)の、消費エネルギー(基礎代謝、総代謝エネルギー)の比較では、通常マウスが無菌マウスの約1.4倍ものエネルギーを消費することが明らかにされている。2) 腸内細菌によるエネルギー消費の増加は、見かけ上、人体が消費するエネルギーが増大することを意味する。つまり、太りにくい身体を示唆している。また、腸内細菌はコレステロールを吸収されない形に変換し糞便中に排泄している。また、腸内細菌が産生する有機酸が消化管を刺激して、消化管の働きを活発にしている。3) そこで、新たなに開発した乳酸菌並行複合発酵産生物質(AH21と略す)が生体に与える影響および安全性を確認することを目的として本実験を試みた。

材料および方法
○実験動物
離乳期雄マウス(BALB/c、3週令)24匹を用い、一群6匹の四群に分け、標準精製飼料(AIN93G)群 (ctrl群)、乳酸菌並行複合発酵物質の服用液量(以下、AH21とする)に含有される固形分を等量含有する飼料を摂取させる群(@群)、服用液量に含有される固形分AH21を3.3倍量含有する飼料を摂取させる群(A群)、服用液量に含有される固形分AH21を10倍量含有する飼料を摂取させる群(B群)とした。これらを、4週間飼育した。本実験開始前1週間、馴らし飼育を行なった。飼育環境は、室温 22℃±1℃、日照 12時間 On/Off、湿度 55%±5%で、飼料は粉末用給餌器(落し蓋付)に容れ、自由摂取とした。表1に飼料組成を示した。水は水道水を自由に摂取させた。マウスは、ポリプロピレン製の飼育かごに個飼とした。飼育期間中、マウスの体重、糞便の量と外観状態等を経過観察した。糞は株式会社三菱化学ビーシーエルに依頼し、週1回定期的に腸内細菌叢培養検査(Bifidobacterium、Lactobacillusおよび Clostridium perfringens  )を行なった。マウスは、所定の方法にてト殺し、内臓の形態と重量並びに病理学的な変化および血液の生化学的検査について観察記録した。
なお、本実験は「実験動物の飼養及び保管等に関する基準」(昭和55年3月、総理府告示第6号)を満たす条件下で実施された。また、麻布大学生物科学総合研究所運営委員会に実験の申請を行い、許可を得た。

○供試試料(乳酸菌並行複合発酵物の作り方を簡単に記す)

【表1】乳酸菌並行複合発酵物含有飼料組成

*1:AIN-93Gミネラル混合 *2:AIN-93Gビタミン混合

結 果
1) 体重の変化
@群・A群・B群それぞれの実験群の各材料の4週間にわたる体重の変化を図1に示した。体重増加量を各実験群の平均値初日に対して比較すると、順調な増加を示している。ctrl群平均値よりも下位に位置するのがA群で、その上位にあるのがB群である。@群は初期に上回っていたが、後半ではほぼ同水準に推移している。
(図1)拡大してご覧いただけます。

2)糞量、餌摂取量および飲水量の変化
図2のごとく、各群の乾燥糞量は全体的に見てctrl群より@群・A群・B群それぞれがともに高値を示した。このことは乳酸菌並行複合発酵物(AH21)の飼料への添加がなんら問題ないことを示唆している。各週令毎にctrl群・@群・A群・B群それぞれの糞量を見ると、実験開始から1週間は上昇し、2週目にはAH21が糞量の増加を促していることが示されている。その後も糞量の増加が見られている。
(図2)拡大してご覧いただけます。
一方、各群の餌摂取量は、実験開始から1週目と第4週目とを比較するとほぼ順調な上昇を示した。しかし、4週目ではctrl群・@群・A群に対して、B群では低値であった(図3)。また、飲水量は第3週にそのピークを各群ともに示した。これらの中でA群の飲水量が最も多く、B群の飲水量が高値を示した。第4週ではA群が横ばいであったほか、ctrl群、@群、B群はともに下降を示した (図3)。
(図3)拡大してご覧いただけます。
飲水量は、ctrl群・@群・A群・B群それぞれ、実験開始から1週間と4週間の変化を比較すると、ctrl群ではほぼ一定であったのに対して、餌へのAH21の混合割合の高いものほどその飲水量が多く、その差の著しい群はA群であり、ついでB群であった(図4)。
(図4)拡大してご覧いただけます。

3) 腸内細菌叢検査
マウス糞便(各群2匹ずつ、計8匹)についてBifidobacterium、Lactobacillus、Clostridium perfringens総菌数を測定した。糞便は採取後速やかにシードチューブ(栄研化学)に投入し、冷蔵条件下で輸送を行った。腸内細菌叢の測定は株式会社三菱化学ビーシーエルにて行った。糞便検体を嫌気性希釈液4)を用いて希釈し、10-1から10-8まで10倍希釈系列を作製した。5)これを表2に示した希釈倍率で各測定培地に塗抹した。好気性菌の総菌数算定用として羊血液寒天培地M58(栄研化学)、嫌気性菌の総菌数算定用としてBL agar(栄研化学)、CDC anaerobe blood agar(BBL)を用いた。また、Lactobacillus、Bifidobacterium、Clostridium perfringensの選択培地として、それぞれModified LBS agar(BBL)、BS agar(base:BL agar)、CW egg yolk agar with Kanamycin(日水製薬)を用いた。羊血液寒天培地M58は35℃、好気培養、その他の培地はアネロパックジャー(三菱ガス化学)を用いて35℃、嫌気培養後、コロニー数の測定および菌の同定を行った。同定は各培地上のコロニーの形態、グラム染色所見、好気発育試験および各種生物化学的性状試験により行った。総菌数は総好気性菌および総嫌気性菌数より算出した。
8例の糞便1g中の細菌数の変動(Lactobacillusおよび総菌数)を図5および図6に示した。ctrl群、AH21投与群による差は認められず、いずれも期間中を通し菌数の大きな変動は認められなかった。総菌数は糞便1gあたりの対数値(logCFU/g)で8〜9に分布した。Lactobacillusは全ての検体で検出され、菌数は対数値6.3から8.7であった。Bifidobacterium、C. perfringensは今回、いずれの個体からも検出されなかった。
(図5)拡大してご覧いただけます。
測定培地を写真1〜4に示す。BL agar(写真1および写真2)は嫌気用非選択培地である。本培地に発育しているコロニーの大多数は好気性グラム陽性球菌とLactobacillusである。Modified LBS agar(写真3)はLactobacillusの選択培地であり、培地上に発育している菌はすべてLactobacillusである。CW egg yolk agar with Kanamycin(写真4)は卵黄液を添加してあり、C. perfringensが発育すると卵黄のレシチンを分解してコロニー周囲に真珠色混濁帯を生じる。本培地上にはC. perfringensは認められていない。
写真は菌叢全体の状態をみるためにはBLagar、Lactobacillusの状態をみるためにはLBSagarが分かりやすい。ただし、LBSagarは菌の発育を抑制させているため、多少菌量が低くなっている。

(写真1〜4)拡大してご覧いただけます。

4) 各種内臓の形態学的ならびに病理学的な変化
飼育期間中、マウスの体重、糞便の量と外観状態等を観察した。その後エーテル麻酔下で頚椎脱臼によりト殺し、内臓を形態と重量並びに病理学的な変化について観察記録した。
観察臓器は、肺、心臓(心房、心室)、胃、十二指腸、空腸、回腸、盲腸、結腸、肝臓、膵臓、腎臓、精巣、精巣上体、脾臓であった。病理組織検査は、10%中性緩衝ホルマリンにより固定後、各群より任意の3個体を選出し組織切片を作成。H.E.染色により染色し、観察した。


病理組織検査結果:

ctrl群およびAH21添加群において、ほとんどの臓器に異常は認められなかった。肝臓においてはctrl郡、AH21添加群ともに肝細胞の変性が見られる個体があったが、両群に見られたことから給与試料によるものというよりは、標準精製飼料(AIN93G)の臓器に与えた影響であると思われた。しかしながら、その程度は軽微であり、正常の範囲内であると思われた。(写真)

(写真)拡大してご覧いただけます。

5) 血液の生化学的検査
1) 血液性状のうち、赤血球数、ヘマトクリット値および平均赤血球血色素量において有意差が見られた。その他の項目では有意差が認められなかった。
2) 赤血球数においては、飼料中のAH21濃度依存的に減少傾向がみられた。しかし、有意な赤血球数の減少が認められたのは、通常量の10倍のAH21を添加した群だけであった。また、この群の赤血球数は正常範囲であったので、大きな問題は無いと考えられた。
3) ヘマトクリット値においても、飼料中のAH21濃度に依存するような減少傾向がみられた。しかし、有意なヘマトクリット値の減少が認められたのは、通常量の10倍のAH21を添加した群だけであった。また、この群のヘマトクリット値は正常範囲であったので、問題は無いと考えられた。
4) 平均赤血球血色素量においては、飼料中のAH21濃度が通常量の3.3倍の場合にのみ、増加がみられた。通常量の10倍量のAH21を添加した群は対照群と有意差を認めなかった。また、有意差が認められた群の平均赤血球血色素量は正常範囲であった。それゆえ、ここで認められた有意差は問題ではないと考えられる。

(写真)拡大してご覧いただけます。




考 察
AH21添加群(以下、実験群)における体重、糞量、餌摂取量については餌摂取量が対照群より低値を示したが、体重、糞量においてはこれを上回っていた。また、実験群全てにおいて体重の面では十分な発育、成長ならびに代謝が行なわれていたものと思われる。従って、高濃度のAH21を含有した食餌においても、体重増加という点では、その成育に異常をきたさないだろうということがいえる。
腸内細菌叢の検査では、今回実験を行った個体からはいずれもBifidobacterium、C. perfringensは検出されず、AH21投与によっても出現はみられなかった。また、糞便中の細菌数は対照群、投与群による差は認められず、AH21の腸内細菌叢に及ぼす影響は少ないと思われる。
臓器重量については、多くの臓器においてB群での低値を認めたものの、体重について見ると順調な増加が見られていたことから、対照群に比べて今回観察した臓器以外、もしくは脂肪量の増加が起こっていたのではないかと予測される。しかし、他の実験群に関しては対照群より高値を示す臓器も多く、またばらつきも多かったため、AH21の含有濃度による各種臓器の発育への影響について不明ではある。しかしながら、臓器重量ならびに肉眼所見から明らかな異常は認められなかった。
さらに、病理組織学的観察では主に消化器系に重きをおいて観察を行なった。肝臓に関しては、HE染色下では肝細胞質内に大小の空胞が認められた。また中心静脈中心性に変性・壊死が起こっていることから、AH21の影響が考えられるのであるが、同程度の変性が対照群にも起こっていることから、この考えは否定されるだろうと思われる。特殊染色では、脂肪を染めるズダンブラック染色、糖質を染めるPAS染色を行なったが、空胞内容物はどちらにも染色されず、脂肪変性でもグリコーゲン変性、硝子変性などでも無いことが証明できた。したがって、病理学的には水腫性変性などが考えられるが、これもまたはっきりとはしなかった。
以上のことから、乳酸菌並行複合発酵産生物質(AH21)の給餌によるマウス生体への悪影響はなく、安全についても問題ないといえると思われる。
今回、実験対象としたAH21は機能性食品としての生体への効果が期待されている。具体的には、素材生体防御、疾病予防と回復、体調調節、老化抑制などの有用な機能があげられる。また、その作用をプロバイオティクスやプレバイオティクスやバイオジェニクスの3つのカテゴリーにわけて捉えることができる。
プロバイオティクスは"腸内微生物のバランスを改善することによって、宿主動物に有益に働く生菌製品"と定義されている。つまり経口摂取した菌が腸に達して腸内の細菌叢に直接働きかけるというものである。これに対してプレバイオティクスは"腸内(結腸内)の有用菌(主にビフィズス菌)の増殖を促進したり、有害菌の増殖を抑制することによって、宿主に有益に働く難消化性食品成分"を指す。つまり有用菌のエサになるなどして有用菌を支援し、結果として生体によい効果を生むというものである。オリゴ糖や食物繊維などがこのカテゴリーに属する。さらにバイオジェニクスは"直接的な免疫賦活作用や変異原性、腫瘍形成、過酸化、高コレステロール血症、腸内腐敗の抑制により、宿主に有益に働く生理活性物質"とされ、生体に直接作用し、その結果、腸内フローラにも好影響を与えるというものである。
乳酸菌はプロバイオティクスの目的によく適うため、構成成分として伝統的に用いられてきた。AH21もまた乳酸菌を利用したプロバイオティクスの一つであり、今後のさらなる研究によってその有効性が確認されることを望んでやまない。

※参考文献
1)光岡智足、腸内菌叢の分類と生態 [研究叢書 1] 105-142、中央公論事業出版、東京、1986
2)調査中
3)光岡智足、腸内細菌学 81-178、朝倉書店、東京、1990
4)光岡知足:腸内菌の世界.叢文社,東京,1980
5)日本細菌学会教育委員会編:細菌学技術叢書3.嫌気性菌の分離と同定法.菜根出版,東京,1982

Reeves,P.G., F.H.Nielsen, and G.C.Fahey,Jr.
AIN-93 Purified diets for laboratory rodents : Final report of the American Institute of Nutrition Ad Hoc Writing Committee on the reformulation of the AIN-76A rodent diet . J.Natr, 123:1939-1951(1993)
安全性に関する検討 / ストレスによる抑制 / 白血病細胞について / コレステロール抑制 / 血糖値降下 /
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